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人生で4番目10
伊藤祐靖 旗を吊り下げる細工をロープにし始めた。その間じゅう、ひっきりなしに2機のジェット機は私の近くを通過した。その度に作業を中止して隠れなければならない。 「ブーン」 どこか呑気なプロペラの音がしてきた。海上自衛隊の哨戒機P3Cだ。塔載しているセンサーについて、私は海上...

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2014年11月24日読了時間: 2分


人生で4番目 9
伊藤祐靖 えっ、まさか……。数日前にこの島に中国人たちが上陸している。中国の戦闘機が来てるのか?? ジャングルの中にあって、真上の空しか見えない私は国籍が気になった。石垣島を出港した昨晩から何か大きなことが起きたのかもしれない……。...

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2014年11月24日読了時間: 2分
人生で4番目 8
伊藤祐靖 疲労感は、その限度を通り越し、絶望感に変わりつつあった。2本の脚で立っているのも苦痛で、その場にへたり込みたくなってきた。仮にここですべてを投げ出してしまっても急に楽になるわけではない。こんな絶海の孤島のジャングルである。ここから、今来た経路を戻り、再び漁船まで泳...

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2014年11月24日読了時間: 3分
人生で4番目 7
伊藤祐靖 自然界に溶け込んで、幽体離脱している気分だったのに、肉体が存在しているという現実に引き戻された。そればかりか馬鹿にきつい。口から心臓が出てきそうに苦しくなってきた。この程度の傾斜、植生、背負っている重量で、こんなにきついわけがない。何かがいつもと違うはずだ。ペース...

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2014年11月24日読了時間: 2分
人生で4番目 6
伊藤祐靖 5分もすると、海沿いあった灯台のからも遠くなり、僅かに足下を照らしていた星の明かりも鬱蒼と茂るクバの枝葉が遮断し、完全な漆黒となった。 4日前に上陸した香港の活動家達のうちの数名が密かに残っている可能性は多分にあった。彼らにすれば、我々の乗っていた漁船は、真夜中に...

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2014年11月24日読了時間: 3分
人生で4番目 5
伊藤祐靖 背泳ぎのような体勢でおでこ越しに灯台の明かりを見つめながら、顔面だけを水面に出して島への近接を開始した。距離は、300m程度だろう。これで、灯台と私の間に人が入ればすぐに判る。要するに私が上陸しようとしている地点に人が近づけば、そいつは灯台というバックライト背負う...

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2014年11月24日読了時間: 3分
人生で4番目 4
伊藤祐靖 港へ着いて、「第一桜丸」に乗り込むとすぐに弁当を食べた。20時30分の出港直後にまた一つ弁当を食べて、ビールを1リットル飲んだ。べた凪の海面を15ノット程度で進む中、21時には寝た。全長160mある軍艦とは、揺れの周期が全く違うが、船の揺れは、何とも心地よく懐かし...

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2014年11月24日読了時間: 3分


人生で4番目 3
伊藤祐靖 石垣島のホームセンターでリストに従って必要なものを調達して、ホテルの部屋に戻るとまず、特大の国旗の四隅にロープを付けれるようにすることから始めた。四隅に穴をあけ厚手の布を重ねて鳩目(靴ひもを通す穴にあるような環状の金具)を打ち込んだ。...

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2014年11月24日読了時間: 2分


人生で4番目 2
伊藤祐靖 香港活動家らが尖閣諸島の魚釣島に上陸した2日後、私は石垣島に向かうため羽田空港にいた。政府は奴等の処分を決定していなかったが、無罪放免としやがった時の腹は決まっていた。 私の乗り込む漁船は、18日の20時頃に石垣島を出港する。尖閣諸島周辺海域は高気圧圏内でべた凪な...

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2014年11月24日読了時間: 3分


人生で4番目
伊藤祐靖 平成24年8月15日、香港活動家らが尖閣諸島の魚釣島に上陸した。私は、不謹慎ながら心の奥でほくそ笑んでいた。それは、上陸した者、上陸を許した者への感情とは別のものであって、自分の出番が近づきつつあるという予感と今まで培ってきた能力が少しは役に立ちそうだという確信が...

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2014年11月24日読了時間: 2分
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