荒谷卓
戦後70年に当たり、日本人が主体的に大東亜戦争までの歴史と戦後の歴史を見直す動きが出てきている。
安倍首相も、4月末からの訪米の際、米議会上下両院で、戦後70年を迎えた日米関係に関する演説を行うことを踏まえ、「 20世紀を振り返り21世紀の世界秩序と日本の役割を構想するための有識者懇談会 (「21世紀構想懇談会」)」を開催した。
保守派からは、安倍首相が村山談話などの自虐史観を否定した内容の新たな談話をしてくれるものとの期待感が多い。しかし、歴史認識において根本的修正がなされる可能性はほとんどない。むしろ、今回の訪米での発言は、歴史認識の修正を許さない米国の「踏み絵」的性質のものとなるだろう。
「21世紀構想懇談会」のメンバーは、米国のポチのような元外務官僚や元防大校長、日本伝統の価値の復興に警鐘を鳴らす米国要人のメッセンジャーのような読売新聞米国総局長等対米従属派が大半を占め、そして北岡伸一座長代理にいたっては、3月9日、都内のシンポジウムで「安倍(晋三首相)さんに日本は侵略したといって欲しい」「日本は侵略戦争をして、とてもひどいことをしたのは明らかだ」と発言している。
歴史認識問題の確信犯は、中国や韓国ではなく米国である。親米政策と歴史認識問題の解決は相容れない。したがって、親米政策を積極的に進める安倍政権において、歴史認識を改めることはできない。
こうした中で、注目すべき動きがあった。3月16日参議院予算委員会で、自民党の三原じゅん子議員が、「八紘一宇」の神武建国理念こそが現在のグローバル資本主義の中で日本が示すべき理念であるとし、麻生財務大臣に質問したのだ。
さらに、翌日、『私があえて「八紘一宇」という言葉をつかって、委員会質疑で問題提起を行った意図をお伝えしておきたいと思います。』として、次のように語った。
『この言葉が、戦前の日本で、他国への侵略を正当化する原理やスローガンとして使われたという歴史は理解しています。侵略を正当化したいなどとも思っていません。私は、この言葉が、そのような使い方をされたことをふまえ、この言葉の本当の意味を広く皆さんにお伝えしたいと考えました。
ご指摘いただいた中にもありましたが、「八紘一宇」という四字熟語そのものは、大正時代に入ってからつくられた言葉であると言われていますが、もともとは神武天皇即位の際の「橿原建都の詔(みことのり)」にそもそもの始まりがあります。
是非、全文をお読みいただきたいと思いますが(「橿原建都の詔」の全文は、末尾に引用させていただきました)、まずは該当部分の抜粋をご覧ください。
「八紘(あめのした)を掩(おお)いて 宇(いえ)と為(せ)んこと亦可(またよ)からずや」
今回、私が皆さんにお伝えしたかったことは、戦前・戦中よりも、ずっとずっと昔から、日本書紀に書かれているような「世界のすみずみまでも、一つの家族として、人類は皆兄弟としておたがいに手をたずさえていこう」という理念、簡単に言えば「みんなで仲良くし、ともに発展していく」和の精神です。
この詔を素直に読んでみますと、国民のことが「おおみたから」と呼ばれているように、自分より他人をいつくしみ思いやる利他の精神、きずなを大切にするこころや、日本の家族主義のルーツが、ここに表れているのではないかと私は感じました。
今回、「陸奥(むつ)の国震災賑恤(しんじゅつ)の詔」でもご紹介いたしましたが、歴代天皇の詔やお言葉のなかに引き継がれている、人をいつくしむ精神こそ、長い歴史をもつ日本という国の理念としてとらえ直すべきではないか。そうして、もともとの意味にもどって、世界の人に理解してもらえるよう発信していくべきではないか。そう、私は考えたのです。
その思いから、今回の質疑の中で、この言葉を申し上げることに決めました。
今回の質疑では、グローバル資本主義の下、競争社会が行き過ぎ、つまり弱肉強食であって、自分さえ儲かれば他人などどうでもいいといった考え方が世の中にあることをうれい、それを正すための理念が必要だと考えました。
今回の私の質疑がひとつのきっかけになって、忘れられようとしている日本の「建国の理念」と「天皇陛下の祈り」について、広く知って頂くとともに、皆様に考えて頂ける機会になって欲しいと思っております。
最後に、ご批判も含め、皆様から頂いている様々なご意見を糧として、私の議員としての今後の活動に、しっかりと活かしていきたいと思います。』
大変勇気のある発言である。例によって、各メディアからは激しいパッシングを受けている。三原議員がどこまで意志を貫けるか。
伝統日本を守る保守ならば、三原議員を援護するべきだ。神武建国の理念が改めて国会で取り上げられたのだから、これを改めて否定させてしまってはならない。こういうときにこそ力を結集しなくてどうするのだ。
併せて、戦後70年を日本の戦後70年に終わらせず、当に「八紘一宇」の理念の下、アジアの諸国と共に、『世界各国がそれぞれの所を相寄り助け合って、万邦共栄の楽を共にするのは世界平和確立のための根本的に重要な点である。』とし、大東亜戦争を目的に戦った戦後70年として見直すべきではないか。
大東亜共同宣言にいわく
抑?世界各國ガ各其ノ所ヲ得相倚リ相扶ケテ萬邦共榮ノ樂ヲ偕ニスルハ世界平和確立ノ根本要義ナリ
然ルニ米英ハ自國ノ繁榮ノ爲ニハ他國家他民族ヲ抑壓シ特ニ大東亞ニ對シテハ飽クナキ侵略搾取ヲ行ヒ大東亞隷屬化ノ野望ヲ逞ウシ遂ニハ大東亞ノ安定ヲ根柢ヨリ覆サントセリ大東亞戰爭ノ原因茲ニ存ス
大東亞各國ハ相提携シテ大東亞戰爭ヲ完遂シ大東亞ヲ米英ノ桎梏ヨリ解放シテ其ノ自存自衞ヲ全ウシ左ノ綱領ニ基キ大東亞ヲ建設シ以テ世界平和ノ確立ニ寄與センコトヲ期ス
一、大東亞各國ハ協同シテ大東亞ノ安定ヲ確保シ道義ニ基ク共存共榮ノ秩序ヲ建設ス
一、大東亞各國ハ相互ニ自主獨立ヲ尊重シ互助敦睦ノ實ヲ擧ゲ大東亞ノ親和ヲ確立ス
一、大東亞各國ハ相互ニ其ノ傳統ヲ尊重シ各民族ノ創造性ヲ伸暢シ大東亞ノ文化ヲ昂揚ス
一、大東亞各國ハ互惠ノ下緊密ニ提携シ其ノ經濟發展ヲ圖リ大東亞ノ繁榮ヲ增進ス
一、大東亞各國ハ萬邦トノ交誼ヲ篤ウシ人種的差別ヲ撤廢シ普ク文化ヲ交流シ進ンデ資源ヲ開放シ以テ世界ノ進運ニ貢獻ス
(現代語訳)
そもそも世界各国がそれぞれの所を相寄り助け合って、万邦共栄の楽を共にするのは世界平和確立のための根本的に重要な点である。
しかし、米英は自国の繁栄の為に、他国家他民族を抑圧し、特に大東亜に対しては飽くなき侵略搾取を行い、大東亜隷属化の野望を露わにし、遂には大東亜の安定を根底より覆そうとしたことが、大東亜戦争の原因である。
大東亜各国は連携して、大東亜戦争を完遂し、大東亜を米英の束縛より解放して、その自存自衛の戦いを全うし、左の綱領に基づき、大東亜を建設し、以て世界平和の確立に寄与することを期待する。
一、大東亜各國は協同して大東亜の安定を確保し道義に基く共存共栄の秩序を建設する
一、大東亜各國は相互に自主獨立を尊重し互助親睦の実を挙げ大東亜の親和を確立する
一、大東亜各國は相互に伝統を尊重し各民族の創造性を伸張して大東亜の文化を高揚す
る
一、大東亜各國は互恵のもと緊密に提携し経済発展を図り大東亜の繁栄を増進する
一、大東亜各國は万国との交誼をあつくして人種的差別を撤廃しさまざまな文化を交流
しすすんで資源を開放して世界の発展に貢献する
戦後70年の結節。全部否定と全部肯定のような無思考からは何も教訓を得られない。自ら歴史をつまびらかにして何を改め何と継承するのかを考えなくてはならないのだ。政府にはできない大事なことは、天皇陛下の大御心を奉戴する国民が自ら為さなくてはならない。それが『八紘為宇』だ。
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