予備役ブルーリボンの会
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夢・・・

最終更新: 2018年7月28日

伊藤祐靖


「ジェン、お前は毎日何してるんだ? 」

「何してんだって? あんた知ってるでしょ。毎日ここに来て、あんたと走って、朝食べて、射撃、ナイフ、昼食べて、潜って、水中スパーリングして魚突いて帰って寝てるわよ」

「それだけか? この生活がいつまでも続いていいのか? 人生設計? 夢? お前みたいな20になったばかりの女性ってあるだろ? 友達とそういう話しないのか?」

「…………」

「いくつで結婚するとか、ないのかよ? どんな家に住みたいとかあるだろ?」

「結婚したい人はいるけど、そんな話なんかしないし、友達とも話さない」

「あなたは、どうなのよ?」

「俺か、俺がお前の年齢の時はな……」

「ノーーー、昔じゃなくて、今よ。今のあなたの夢は? 人生設計は?」

「…………」

はっとした。ない。自分で聞いておきながら自分には、夢も人生設計もない。そのことに初めて気付いた。何故ないのかは、よく判っていた。この約10年前特別警備隊の学生を集めてよく言っていた。


「集合よろしい!」

「休め。おい、名前は?」

「土○です」

「幾つだ?」

「24です」

「俺と一回り違うのか、辰年か?」

「はい」

「俺は36だ、俺は40歳にはならない」

「…………」

「俺は、40歳にはなれないんだよ。俺たちの任務は、北朝鮮の工作船に乗り込んで、人質奪還、武装解除だ。当然、消耗は激しい。生きていたいという感情を決して否定しないし、その希望も捨ててはいけない。まして、任務は、死ぬことではなく、可能な限り生き続けて、何度でも出撃して任務を達成し続けることだ。更に、ここまで毎日毎日、錬磨している心と身体を消滅させることなんぞ軽々しくできるはずもない。しかし、だけどな冷静に考えて見ろ。1回や2回の出撃なら生還の可能性もあるだろう。でも、そうそう幸運も続きゃしない。4年はもたないだろう。何となく、「自分だけは、大丈夫なんじゃないか」とか、「何度行っても生還できる気がする」、なんて考えは止めろ。冷静に考えれば極めて当たり前の話なんだよ。短い生命だということをよく考えて生きろ。覚悟とか心の置き方の問題だけじゃないぞ。突然、近々やってくる最期の瞬間のための具体的な準備をしておけ。身辺を綺麗にしておけ、借金とかトラブルとか引っ張るんじゃね~ぞ。その辺の準備なく、最期の瞬間を迎えた時に後悔しても遅い」

「…………」

突然、寿命があと4年ないと宣告されたのだから、普通なら引いてしまう話である。しかし、そこにいた全員が若いオス特有の、何かを決意している時の目で、深く息を吸いながら私を睨み付けていた。技術的にはまだ何もできないが、彼らとなら工作船に一緒に乗り込む意義はあると感じていた。

「おい、土○、だからお前は、28歳にはならないんだよ。その前にお前という生き物は終わる。俺たちの人生は短い。だけどな、満足感と達成感と充実感は最高のものが手に入る。そのためにも、何が何でも任務は達成しなければならない。だから、今から一瞬も無駄にするな。人生を終える瞬間に任務完遂を確信できるために生きろ。何をしたら確信できるようになるのかは、お前らはまだ学生なんだ、俺が教える」


「ジェン、なんで今の俺の夢、人生設計が知りたいんだ?」

「私に聞く前に自分で言いなさい」

「俺の夢は、死ぬ時に自分で自分に任務完遂と言えればそれでいい」

「あなたバカじゃないの? 軍隊辞めたんでしょ。誰があなたに命令を出すのよ?」

「俺は、一人で生きてるから自分で自分に命令するんだよ」

「バカね~、あなたはもう軍人じゃないのよ、好きに生きればいいの。命令とか任務とか関係ないの!!」

「なに興奮してんだ? 自分で自分に任務を課すのが好きなんだよ。好きなんじゃないな、そうでもしないと、とことん堕落することを知ってるんだ」

「何なの任務とか、課すとか、自然にしなさいよ」

「…………」

「私は、あなたの国に必ず行くわ、パスポートだのビザだの手に入れて必ず行く。あなたがここに来れて、私がそこに行けないわけがない」

「ん~~」

「それが、私の夢。必ず行って、日本語を覚える。協力しなさい」

「ん~~」

この日を境に、少しずつ身の上話をするようになった。ジェニーのことを知れば知るほど、驚きと感心の連続で、それと同時にどんどん判らなくなっていった。「国って何なんだろう?」「自分は、いったい何がしたいんだろう?」

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